STORY #3

aJADE誕生に至るまで

長年温めていた構想が実現化!?

本革ゴルフシューズを展開する過程で、以下のようなデメリットが明確になっていました。
①お手入れが大変・・・お手入れこそが本革シューズの醍醐味だが、スポーツ用途としては面倒なポイントに。
②水に弱い・・・本革は突然の雨や露に弱く、水を吸って重くなってしまう。
③重い・・・昨今の軽量化されたシューズと比べると天然皮革はグッと重くなる。重いシューズが敬遠されがち。
④高額・・・イタリアからの輸入商品のため、関税等の輸入諸費が高く、高額になってしまう。

今やほとんどのメーカーがスニーカー+ワイヤーのシューズをラインナップしているけれど、デザイン的にクラシックスタイルが好きなゴルファーは確かに存在する。上記のようなデメリットを払拭し、クラシックスタイルのデザインは残しつつ、スニーカーのように履きやすく、ゴルフシューズとしての機能性を持ち合わせる手軽なゴルフシューズがあったら、より多くのゴルファーに喜んでもらえるのではないか。

ジワジワっとひそかに練っていたこのハイブリッドシューズ構想を実現化することを決めました。

持つべきものは業界の友!

私と同じく2000年に渡米し、日本のとあるゴルフメーカーの現地法人に駐在で勤めていた親友がいました。2歳年上のT君は、同じB型で気が合い(笑)、アメリカ時代よく一緒にゴルフをしていました。商品開発、性能評価をしている彼なら、何かヒントをくれるかもしれない。ちょうど一時帰国をしていた彼に、「ゴルフシューズを創りたいのだけれど、どうしたらいい?」と相談したところ、「適任がいるよ!」というのです。一緒にゴルフシューズの開発を手掛けていた靴職人が独立して、インドネシアの靴工場の窓口をしていると。早速、そのH君と会うことに。

2016年春、最初のミーティングを行いました。その時は、本当に理想とするゴルフシューズが創れるのだろうかと、実に半信半疑でしたが、やると決めたからには、色々教えてもらいながら前に進んでみようと意を決し、本格的にプロジェクトをスタートさせました。会社経営、店舗運営、海外出張に商品開発が加わり、これまで以上の忙しさでしたが、夢中でした。

ここ数年でゴルフを始めた方の中には、本革ゴルフシューズの存在を知らない方も多くいらっしゃるようです。アメリカでゴルフが盛んになり、時代と共にゴルフ用品がとても合理的になっていきました。シューズも然りです。古きよき伝統や本来の形は現代ゴルファーにも知っていてもらいたい、そんな思いから私はクラシックスタイルのデザインにこだわりました。かつて砂除けとしてシューズに装着されていた「キルト」をリバーシブルになるようデザインして、1足で3つのパターンが楽しめるようにしました。

シューズのデザインのみならず、機能をどう施すのかは大きな課題でした。私自身ゴルファーですから、機能面のこだわりもとても強く持っていました。安定したスイングができること、疲れにくいこと、しっかりしたグリップ力があること、歩きやすいこと、などなど、自分がゴルファーとしてあったらいいなをすべて盛り込もうと。アッパーには合成皮革と大きく異なる素材、人工皮革・クラリーノを使用。これは日本が誇るクラリ社の特別な技術が施された驚きの素材です。本革に比べ約30%軽量、水に強く、耐久性があります。なんと言ってもそのしなやかさは、まさに本革のよう。どんどん足に馴染んでいきます。次に防水機能、メンブレン素材にシームシーリング加工を用いたブーティー製法を採用し、100%防水が実現。雨が降っても快適に履いていただけるようにしました。この技術を、Hydro Bootie & Breath と呼んでいます。

なんといっても、履き心地はソールにあり!ということで、オリジナルソールの開発に一番時間を費やしました。柔軟性のあるラバーを使用することで、歩く動作が快適になります。そして、スイングの安定には確かなグリップ力が必要ですから、鋲の台座を埋め込むパーツにはTPU(合成樹脂)を用い、新しいコンビネーションソールを生み出しました。歩きやすい柔軟性のあるラバーソールに、グリップ力を加えるためのTPU、そして、体重とスイングを支えるだけの程よい重厚感。フィニッシュで見せる靴裏にも配慮し、TPUのカラーはアッパーのメインカラーと同色にしました。

靴紐にもこだわりました。足を支えるのに必要な太さに加え、ほどけにくいロー引き加工も欠かせません。国内の製紐工場を探して、直談判。アッパーデザインとマッチするよう、糸帳からカラーを選んで生産しています。また、ライニングに使用している素材も日本で調達することにしました。起毛素材を用いることで、靴の中でのズレを軽減させるためです。

初サンプル完成!結果は・・・NG!

残念!なんてイマイチなんでしょう!初めてのサンプルシューズを見て、私は落胆しました。思っていたものとは大きく異なり、華奢で、理想的なフォルムとはかけ離れている。モノづくりの難しさを目の当たりにしました。どこをどう改善すればいいのか、時々ぶつかり合いながらもH君と真剣に取り組みました。

シューズ創りの一番のコストは、アウトソールの開発費です。いわゆる金型代、これが本当に高額なの。。。H君曰く、ほとんどの人がそのコストを聞いて、靴づくりを断念するというのです。だけど、靴底がなくっちゃ靴にならないわけで、諦めるわけにはいきませんでした。高額だと分かっていても、このNGサンプルに使用した金型は、迷うことなく捨てました。納得いかないまま進められない性格ですから、致し方ありません。工場にもたくさん無理を言いましたが、この妥協しない性格が功を奏したのか、最後にはデビュー作とは思えないほど、納得のいくシューズが出来上がってきました。

ブランドを持つということ

どんなブランド名がいいか、脳ミソフル回転で考えました。アメリカの雑誌社にいた頃、独学でイラストレーターの使い方を習得していた私は、ブラウザとにらめっこしながら、ひたすら文字を並べたり、ロゴの形にしてみたりと試行錯誤の日々が続きました。ふと目にした英単語「JADE」にビビッときてからは、その英単語の虜になりました。JADEは、日本語で翡翠、"目標を成功へと導き、豊かな時間を与え、人生の成功と繁栄をもたらしてくれる"という深緑色のパワーストーンであり、そのカラーはゴルフのグリーンを想像させます。愛用してくれるゴルファーの皆さんにこんなパワーが伝わるといいなと思い、この単語をブランド名にすると決めました。

ブランド名は将来的に「商標登録」をして守る必要があります。JADEのような一般的な固有名詞で登録することは難しく、何かひねりを加えなくてはと思いついたのが、私の名前のイニシャル"a"を最初につけるというものでした。こうして「アジェイド」という造語が完成、当初の英語表記はすべて大文字「AJADE」でした。

軽井沢に移住してから毎年のように見てもらっている人生鑑定の先生に、ブランド名の運勢について見てもらうことにしました。すると、画数に言及され、「AJADE」は14画であまり調子が良くない、13画だと多くの人に愛されるブランドになるよというのです。漢字の画数は考えたことあるけれど、まさか英単語も!?そこで、"A"を小文字の"a"にしてみたところ、ビンゴ!の13画、こうして英表記「aJADE」が誕生しました。

シグネチャーマークを考える

縁の多かったイタリアのファッションブランドから学ぶことはたくさんありました。その一つがシグネチャーマークの存在です。ブランドには誰が見てもそのブランドと分かる印象的なマークがあって、あらゆる商品にそのマークが施されています。アジェイドにもシグネチャーマークが必須と思い、ブランド名決定後、またまたブラウザとにらめっこの日々が始まりました。イラレで色々やってみたのですが、最終形に辿り着くまでには随分時間を要しました。一旦決めたマークが、他の海外メーカーのマークと似ているとわかり、やり直し。練りに練ってようやく4つの"a"を使ったマークが完成しました。

aから始まる4つの英単語を選び、商品開発にかける思いを入れ込みました。それが、以下の4単語です。

Authentic・・・商品の特長やコンセプトを充分に語ることのできる「本物」であること。
Adore・・・伝統を継承しながらもモダンで品位のある「憧れる」存在であること。
Appropriate・・・シーンに合わせた着こなしで、その場の雰囲気や状況に「適して」いること。
Attractive・・・斬新なデザインや洗練された色使いを施し、人々を「魅了」すること。

そして、この最終形が決まってから、シューズのつま先に使うメダリオンをデザインしました。レディースのエセル&カレン、メンズのハーマン&レイのつま先に施された飾り穴(メダリオン)は、このシグネチャーマークをベースに創っています。

いよいよ、シューズが世の中に!

最初の開発ですから、シューズを世の中に出すために、シューズ自体の生産以外にやらなくてはいけないタスクがわんさかありました。靴箱の設計にデザイン、シューズバッグのカラー選びからデザインまで、最後の最後までやり抜きました。好きじゃなかったら途中で心折れていたかもしません。そして、開発からわずか1年足らずで、aJADEゴルフシューズが海を渡って日本に上陸する日がやってきます。インドネシア・ジャカルタ港をでたという報告を受けた時、ドキドキが止まりませんでした。そして、入庫した倉庫に家族とスタッフ総出で出かけ、「aJADE」と書かれた段ボールの山を見た瞬間、涙が込み上げてきました。

あれから5年。今では、日本全国の百貨店やゴルフ場に加え、軽井沢直営店にて展開しています。創った本人にフィッティングしてもらいたいと、アジェイドゴルフシューズを求めて、わざわざ地方から直営店に足を運んでくれるゴルファーも少なくありません。愛用いただいているお客様とシューズのお話をしていると、全力で開発に取り組んだあの怒涛の日々があったからこそ今があるなぁと、実に感慨深く思います。

STORY #4